キミの手 キミの体温
「あの人のせいで……苦しいの?」
いつの間にか目の前には白奈の姿があって、床に座り込む俺に長い腕を伸ばしてくる。
自分以外の体温が服の上からじわじわと迫ってくる感覚。
それと同時に、
「宝珠のそんな顔見るのヤダよ……」
しゅんと瞳を伏せた白奈の顔がぐっと近付き、胸元から俺を覗き込んでる。
いつもなら顔を近付ける白奈を押し返すのに、
「白奈ならそんな顔させないよ? だってあたしは宝珠の傍にずっと居るもん」
吐息が絡む程近付いた唇から零れ落ちた言葉が、壊れた心にじんわりと染み込んでくる。