キミの手 キミの体温

服の裾から素肌に触れてくる手。


後一秒でくっつきそうな唇。



“だってあたしは宝珠の傍にずっと居るもん”



俺のボロボロの心に向けられた最高の口説き文句に、全身がドクンと大きく脈打った。



この唇を受け入れれば俺は楽になれるんだろうか。


千愛を求めて足掻く苦しい心が解放されるんだろうか。



白奈の細い腰に触れようとした瞬間、



無理矢理奪った千愛の唇の味を思い出す。



俺の最初のキスはあの時。


千愛が好きで堪らなくてしてしまったあのキスだ。



そしてあの時と同じように、



“ずっと宝珠だけ好きって約束する!”



小指を絡めて笑い合った千愛の顔が頭をよぎっていった。



< 106 / 359 >

この作品をシェア

pagetop