キミの手 キミの体温
誰も居なくなってすっかり静かになった教室に、宝珠を呼ぶわたしの声が小さく響いた。
扉をくぐった宝珠は、手に大きめの封筒を持ったまま面食らったみたいにわたしを見下ろしてる。
「宝珠身長伸びたね!」
ようやく宝珠と話せる!
そう思ったら自然と声が弾んで、顔だって笑顔になってしまう。
昔はほとんど無かった身長差。
今ではすっかり宝珠を見上げてる。
男の子らしくなったんだなって、今更実感してしまう……。
「……あのさ」
完全に一人ではしゃいでしまっていたわたしに、宝珠は低いくぐもった声でぼそりと呟く。
「なに?」
「……俺に何か用事?」
素っ気ない口振りで聞いたかと思えば、盛大な溜め息を目の前で吐かれてしまった。
もしかしたら、初日で疲れてるのかもしれない。
今日は約束だけ取り付けて、案内は明日でもいいかな?
気が急いてしまう自分に反省しながら、わたしが口を開こうとしたその時だった。