キミの手 キミの体温

わたしの後ろでやりとりを見ていた水希が声を上げたのを、周助が慌てて制止する声がぼんやりと耳に聞こえてくる。



「あなたのせいで宝珠はずっと苦しんでるのっ。あなたが居るから宝珠の心は……昔の呪縛から逃れられない」



目の前で相変わらずわたしを睨んでる女の子は長い睫毛を伏せた後、



「……お願いだから、宝珠と約束してよ。もう関わらないって……宝珠を解放してあげて」



か細く震える声で吐き出した言葉と共に、薄茶の瞳からころんと雫が落ち始めた。



前に宝珠にも言われたことがある。



わたしを見てると昔を思い出すって……。



目の前で涙を流している彼女が、宝珠を大事に想っているって痛いくらい伝わってくる。


だからこうして、わざわざわたしの前に現れたんだ。



わたしの好きは……彼女の想いを上回る程の好きなのかな。



こんな自分のエゴばっかりの好きなんて……。


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