キミの手 キミの体温
「それでも傍に居るって決めたのは自分だろ? だったら見返りなんか求めんなよ」
不意に聞こえて来たのは後ろに居た周助の声だった。
「周助っ」
「好きになってもらえないのを他人のせいにすんじゃねぇ」
驚いて振り返った先にはいつもより真剣な顔をした周助が居て、
「いいから行け、千愛」
わたしの背中を押してくれる。
傍らに居た水希がにっと笑いながら、ひらひらと手を振ってみせてくれた。
「……ありがと」
周助の言葉に黙り込んでしまった彼女に背を向け、わたしは宝珠のマンションへと駆け出していった。