キミの手 キミの体温
それもそのはず。
再会した千愛が俺に笑いかけたのは初日の放課後と、母さんの命日に紅茶を淹れてやった二回。
それもほんの一瞬だけだ。
後は全部、傷付いた悲しげな顔。
俺が流させた涙で濡れた泣き顔ばっかりだ。
「千愛……」
熱く渇いた口から無意識に名前が零れ出した。
……自分から名前を呼ぶなって突き放した癖に、幾度となく名前を呼ぶ俺は存外未練がましい。
届くはずのない俺の声は、暗い部屋の中に響いて消えていく……はずだった。