キミの手 キミの体温
起き上がった俺の目の前には制服姿の千愛が居て、
「千愛っ」
まるで熱に浮かされながら幻でも見せられてるような錯覚に陥った。
「……千愛」
濡れた頬にもう一度触れれば、千愛は涙の残る瞳で俺をじっと見つめる。
「千愛……」
俺の体に触れる手を取り名前を呼んで握り締めれば、潤んだ瞳がゆるやかに弧を描き……、
「宝珠っ」
名前を呼んだのと同じタイミングで、ふわりと柔らかい笑顔に変わった。
空っぽの部屋に微かに灯った明かり。
ずっと焦がれていた手を求めてもっと握り締めた。
氷づけの感情をあっという間に溶かしてしまいそうな体温を、
握り締めた手のひらごと引き寄せて、両手一杯に抱きしめていた。