キミの手 キミの体温
二人の言葉を聞いて小さく笑った宝珠はふっと視線を落とし、
「取り憑いてるっていうか……憑き物が取れたって感じかな。ねぇ千愛?」
「えっ、んっ」
ポツリと呟いたかと思えば、ぼんやり見つめていたわたしの口に卵焼きを押し込んだ。
うぅ……結局食べさせられちゃった。
「……はいはい」
「毎日毎日よくも人前で見せつけてくれるわね……」
その瞬間、二人の口から揃って盛大な溜め息が零れ出した。
恥ずかしがるわたしを尻目に、
「ほら。千愛口に付いてる」
宝珠の長い指が下唇をすっと擦っていった。
耳まで真っ赤になったわたしに構わず、当の宝珠は涼しい顔のまま。
もぅ……宝珠には敵わないよ。