キミの手 キミの体温
でも。
スタスタと足早に逃げるみたいに立ち去って行く周助の手には、ちゃんと手作りのカップケーキがあって……。
「相手から想われるのには慣れてないからねー周助」
チラリとわたしと宝珠を一瞥して、水希は周助の背中を追って行ってしまった。
去り際に見せた水希の表情はどこか意味深で……。
「そりゃそうだな。アイツの気持ちはずっと千愛を想ってたんだから」
「…………」
ポツリと呟かれた宝珠の台詞に一年前の記憶が蘇って思わずちくりと胸が痛む。
呟いた宝珠の瞳は誰も居なくなった屋上の空席を仰いだ後、
「…………」
何も言わずにゆっくりと、ただわたしの瞳を真っ直ぐに見据えていた。