キミの手 キミの体温
「でも」
「……えっ」
「俺の方が千愛を想ってる。俺には千愛が必要だから」
こう言って宝珠はなだれ込むようにわたしに身を寄せて、
「キスしていい?」
そっと耳元で囁きながらわたしの顎を捕まえてしまう。
キスは好きな人としかしたらダメ。
宝珠と唇を重ねる程幸せな気持ちが沸き上がるのに。
「……千愛」
触れる間際にわたしを見つめる瞳はいつも切なげで。
その度に。
込み上げる言い知れない不安を、わたしは感じずには居られなかった。