キミの手 キミの体温
担任に言われた部数プラス予備を足したプリントを渡し、急ぎ足で教室に戻っていく。
先生ってばまだ何か言おうとしてたし……。
ホント人使いが荒いなぁ。
頭の中で担任に愚痴りながら、教室の入り口手前に差し掛かったところで、
「バイバイ舟瀬くんっ」
2、3人の女の子たちと擦れ違った。
多分、教室に一人で居た宝珠を見付けて声を掛けたんだと思う。
相変わらず宝珠に寄って来る人たちには、愛想の良い笑顔で対応してるから……。
その証拠に彼女たちと入れ代わりに現れたわたしに、
「おかえり」
浮かべていた作り笑いを消して小さく笑ってみせた。
あっ、今の顔だ。
さっきの一年生の彼の笑顔。
今の宝珠の作り笑いと似てるんだ。