キミの手 キミの体温
「遅かったな」
「ごめんね。コピー機の調子が悪くなっちゃって」
歩み寄って来た宝珠がこう言ってわたしのカバンを差し出してくれる。
それを受け取ろうと手を伸ばしたら、
「俺のこと呼んでくれたらいいのに」
カバンの代わりに宝珠の手がわたしの手を捕まえる。
「うん……宝珠にメールしようとしてたらね、一年生の男の子が来て直してくれたから」
そのまま言い終わるや否や。
ギュッと絡んでいた指先から宝珠の胸に引き寄せられてしまう。
「宝……」
「ダメ。千愛には俺が居るだろ」
胸元から驚いて見上げた宝珠の顔は、思ってたよりずっと近くにあって。
不意に切なげに瞳を伏せてから、そのままわたしの唇を甘噛みしてしまう。