キミの手 キミの体温

「だったら尚更舟瀬に見て貰った方が良いんじゃねぇの?」


「責任取るって言ったのに……」


なんでそれをここで持ち出すかな……コイツは。


まるで切り札と言わんばかりに、俺の問い掛けを無視してポツリと白奈が呟いた。



あぁ……勢い任せに返事なんかするんじゃなかった。



「宝珠は今、千愛のことで頭がいっぱいなんだもん」


「……あぁ」



そういうことか。

つまりは、


「寂しいんだな」


「違うもん」


「へいへい」



片想いが破れて取り残された者同士、傷を舐め合おうってことか。


……あんまし良い趣味じゃねぇけど。


白奈は失恋を俺の責任にしてるみたいだしな。

だったら、相手してやるしかねぇってワケか。



……って思って承諾したのが昨日のこと。


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