キミの手 キミの体温
「……知らん。つーか」
彼女じゃねぇし。
俺が続けるより先に、
「知らんじゃないわよ! 自分の彼女のこともわかってないなんて情けない……」
ピシャリと声を遮ったかと思えば、嘆かわしそうに眉間にシワを寄せた。
だから、彼女じゃねぇっての。
「もういい。直接聞くわ。……白奈ちゃーん」
ドアの前に立つ俺を押し退けた母さんが、いつもより半音高い声で中の白奈を呼ぶ。
歩み寄った母さんが夕飯のことを切り出したら、白奈は一瞬戸惑った顔をした後、
「あたし、お手伝いしますっ!」
嬉しそうに笑ってテーブルの前から立ち上がった。
それをドアの傍らから見て思うのは、やっぱり昼間に聞いた話。
舟瀬から聞いた白奈の家出の理由だった。