キミの手 キミの体温

「ごめん……千愛」


伏せた瞳が微かに揺れている。
ボタンを摘んだ指先も震えてるみたい。



……不安そうな顔。
まるで熱で浮かされてたあの時と同じだ。


「家まで送るよ」


鳴り止まない胸騒ぎでぼんやりしていたわたしの身なりを整えて宝珠はソファーから立ち上がる。


こう言って手を伸ばしたその顔は、言葉とは裏腹に寂しげで。


手を重ねるより先に目の前の宝珠の胸にぎゅっと飛び込んだ。



「千愛?」


「今日は一緒に居よう宝珠」


「えっ……」


「ここに泊まるっ。一緒に居よ」



出来る限り明るい声で投げ掛け、見上げた宝珠の顔は戸惑いでいっぱいだった。


今日は白奈ちゃんも帰って来ないって言ってたから。
余計に宝珠を独りにしたくなかった……。

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