キミの手 キミの体温
「千愛」
怒って拗ねる仕種も可愛いけど。
せっかく一緒に過ごす夜なのに顔を隠されてしまうのはちょっと寂しい。
「ほらっ」
「…………」
「おいでっ」
チラリと掛け布団の隙間から目だけを覗かせた千愛の隣に寝転んで手招きする。
伸ばした右腕をポンポンと叩き千愛においでと促した。
「……腕痺れないかな? 頭って重たいし」
掛け布団から顔を出した千愛がじっと二の腕を見つめながら呟く。
「いいよ、痺れても」
それはそれで幸せの副作用っていうか……。
体温や重みが感じられる幸せの方がずっと大きくて愛おしい。