キミの手 キミの体温
明かりを消して薄暗くなった部屋はいつもと同じ。
でも、右腕に千愛の重みがあって。
触れ合った体には千愛の体温がある。
まぶたを閉じても体中で千愛を感じられる安心感に、今日は特別な夜だって実感する。
こうして俺の中が千愛で満たされていく程に思う。
もし千愛が俺の過去を知ってしまったら……。
叔母に罵りながら犯されていたことを知ればきっと千愛は俺から離れてしまう。
こんな汚い体をした俺に触れられたくないって思うに決まってる。
ずっと焦がれていた千愛に満たされた今が幸せ過ぎるから。
この幸せが壊れてしまうなんて考えたくない。
だから俺は、千愛が居なくなってしまうことがどうしようもなく怖くて仕方なかった。