キミの手 キミの体温
紅音さんからの電話を切ってから30分。
制服に着替えてキッチンに立った俺の頭の中は紅音さんの涙声がこびりついて離れない。
“再婚して白奈と暮らしたい。白奈との時間を作りたい”
喜ぶべきことだ。
なのに。
なんかが俺の中でざわつく。
その正体がわからずぼんやりと紅茶に浮かべたマーマレードを掻き混ぜていた背中に、
「もうっ」
「……えっ」
「一緒に作るって約束したのに……」
「あっ……」
飛び付いてきたのはむっと唇を尖らせたお姫様。
眠る間際にした約束をすっかり忘れてた俺に千愛は拗ねて視線を合わせてくれない。
だから可愛いって、拗ねてる顔も。
……何回も言うけど。
そんな俺の浮かれた気持ちなんて知る由もなく千愛は膨れっ面のまんま。