キミの手 キミの体温
「悪い。今さっき白奈の母親から連絡があったんだ」
「あぁ」
ちゃんと心配してんだな、母親。
仕事優先って聞いてたからもっと冷たい人なのかと思ってたけど……。
「すぐに迎えに行く」
「いや……すぐじゃなくて良いぞ」
「はっ?」
舟瀬に心配掛けてんだから一言白奈に謝らせてやろうと思って部屋に入れば、
「起きたら連絡するから」
当の本人は空っぽになったマグカップを大事そうに抱えてベッドに転がっていた。
「……そうか。悪いな」
「いや。これ口実に堂々と遅刻出来るし」
「なんだそれ」
そう言って笑う声がどことなく舟瀬らしくない気がしたけど。
言ったらバカにされそうだからそれは黙っておく。
俺がその理由を知るのは白奈が目を覚ました少し後のことだった。