キミの手 キミの体温

心のデリケートな部分に触れる覚悟とそれでも伝えたい言葉。



さっきから変わらない周助の背中が必死に訴えてる気がした。



「親の愛情が欠如してるとその後の人格形成にも影響があるって?」


「らしいな」


「確かに。俺が良い例だし」



皮肉めいて自嘲する俺の乾いた笑いだけがエレベーターの中に短く響いた。



それが消えるや否や、



「相手が誰でもそれに代わる愛情があればちゃんと刻まれるって。そいつの中にも」


「…………」


「確かに良い例だよな。おまえって」



周助がこちらを一瞥したと同時に目的地に着いたエレベーターがゆっくりと動きを止める。




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