キミの手 キミの体温
「やっぱりおまえにはこれからこの先も千愛が必要だってこと」
サラリと呟いて開いた扉を片手で押さえた周助が俺を促した。
紅音さんの電話から燻っていたイライラが霧が晴れるように消えていく。
一緒に過ごせる母さんはもう居ないけど。
思い出を共有しながら一緒に歩いていける大切な人が俺には居る。
扉を押さえる周助を横切りながら、
「……クサイな。それ」
「なっ……」
「顔に似合わずロマンチストだったんだな、おまえって」
ククッとわざとらしく短い笑いで皮肉ってやる。
俺の反応に肩透かしを食らった周助は、照れを隠すようにワシワシと荒っぽく前髪を掻いていた。