キミの手 キミの体温
狡い人
資料を職員室に居た担任に渡した帰り道。
職員室の前で別れた宝珠は、一度だってわたしと目を合わせようとはしなかった。
やっぱり宝珠に避けられてる……。
あからさまな宝珠の態度に、落ち込んでた気持ちが更に沈んでいく。
「千愛?」
「えっ?」
「何ボケボケしてんだよ。歩きながら寝てんのか?」
職員室を出てから一言も発しないわたしに、周助が茶化すような口振りで顔を覗いてきた。
「そんなワケ……」
笑って誤魔化そうとしたけど、上手く笑えなくて思わず目を伏せてしまった。
か細く消えた言葉尻に、周助がこっちを見てるのがわかる。
今のわたし……絶対不自然だ。