キミの手 キミの体温
「舟瀬!」
閉まり際の扉に手を伸ばし、立ち去って行く背中に呼び掛けた。
立ち止まった舟瀬がチラリとこちらを一瞥する。
「なんでちゃんと言わないんだよっ」
こんな風に誤解されたまんまで良いのか?
続けようとする俺を予期していたかのように振り返った舟瀬は、
「それじゃ意味が無い」
「意味って……」
「自分自身で気付かなきゃわからないんだよ。大事なモノの価値が」
ふっと寂しげな顔で小さく笑って、そのまま歩いて行ってしまった。