キミの手 キミの体温
それきり舟瀬に掛ける言葉なんて見つからなくて、結局俺はその背中を見送ることしか出来なかった。
扉の閉じた玄関には白奈の泣いてる声だけがする。
「今朝……見たの。周助のところに来る前に」
「えっ?」
「宝珠の家の玄関に千愛の靴があった……だから宝珠はあたしが邪魔になったのっ」
千愛に失恋した俺なら共感してくれると思ったのか。
そう言って見上げる白奈の目は俺に同意を求めるみたいだった。