キミの手 キミの体温

「……周助なら白奈の気持ち、わかってくれるって思ってたのに」



涙声でポツリと呟いた白奈の言葉と恨めしげな視線。


ここで頷いて白奈の欲しがる言葉を掛けてやるのは簡単だ。


でも。


それをしたら白奈自身に大事なモノを気付かせたい舟瀬の気持ちも、その根底にある白奈の母親の気持ちも無下にしてしまう。



「わかるワケねぇだろっ。おまえの我が儘なんか」



突き放された白奈はしばらく恨みがましそうに俺を睨み、



「……周助のバカッ」



小さく捨て台詞を残して部屋から飛び出して行ってしまう。



“裏切った”



出て行く間際。
重なった白奈の視線はまるで、俺にこう訴えかけてるみたいだった。



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