キミの手 キミの体温
ここに居る理由 side宝珠
“宝珠……ごめんね”
普通の父親が居ないことを気にしていたのか。
母さんは時折、悲しそうな顔で謝って俺を抱きしめた。
母さんの温もりに包まれるのは嬉しかったけど……悲しい顔を見ると胸がキュッと締め付けられたのを思い出す。
だから。
その度に決まって頭の中に浮かぶ言葉があった。
“母さん……俺を産んだこと、後悔してない?”
堪らずそう問い掛けた俺に母さんはなんて答えたんだろうか……。
思い出そうとすればする程、頭の中の霧が濃くなって思い出せなくなっていく。
……いや。
ホントは……思い出したくないのかもしれない。