キミの手 キミの体温
ここに居る理由 side宝珠

“宝珠……ごめんね”



普通の父親が居ないことを気にしていたのか。



母さんは時折、悲しそうな顔で謝って俺を抱きしめた。



母さんの温もりに包まれるのは嬉しかったけど……悲しい顔を見ると胸がキュッと締め付けられたのを思い出す。



だから。
その度に決まって頭の中に浮かぶ言葉があった。



“母さん……俺を産んだこと、後悔してない?”



堪らずそう問い掛けた俺に母さんはなんて答えたんだろうか……。



思い出そうとすればする程、頭の中の霧が濃くなって思い出せなくなっていく。



……いや。
ホントは……思い出したくないのかもしれない。

< 234 / 359 >

この作品をシェア

pagetop