キミの手 キミの体温
「……母さん」
俺が居なければ……母さんはもっと幸せな人生を歩めたんじゃないか。
母さんの眠るお墓の前にしゃがみ込んで、そっと心の中で問い掛ける。
答えてくれる人なんて居ないのに……。
それでも口に出すことが躊躇われた。
結ばれない人の子どもを身篭り、母さんは幸せだったんだろうか。
“宝珠……アナタが憎いの”
俺を忌み嫌う人間が居るこの世界に俺は必要なのか。
憎しみと哀しみしか生み出していないこんな俺は……必要なのか。
母さんの命と引き換えにしてまで守られ、生き残るべきだったのか……。