キミの手 キミの体温
「あんな風に人を傷付けるなんて最低だよっ」
詳しい事情はわからない。
さっき言ったことが嘘か本当かもわからない。
それでも目の前の彼がしたことが最低だってことだけはわかっていた。
上目に睨みつけるわたしに彼はキュッと下唇を噛み締め、
「……わかってますよ。そんなこと」
「はぁ?」
「最低だってわかっててもやらずに居られなかったんだよ!」
荒げた声は今まで保っていたバカ丁寧な口調を一掃させた。
さっきまでの透かした面構えは苦しそうに歪み、
「あの人が憎いから……」
くしゃくしゃと前髪を掻きむしった。