キミの手 キミの体温
「痛そうって……叩いた張本人が言わないでよ」
「ホントだったらグーで殴りたかったぐらいよ。……そうじゃなくて」
痛そうなのはわたしが思い切り叩いた頬じゃなくて……。
駆け出した舟瀬くんと千愛を見送っていたアンタの表情だ。
「俺なんかに構って無いで追い掛ければ……渋木先輩」
前髪に触れていた指先を払い、こう言って開けっ放しの扉の方を軽く顎でしゃくった。
確かに。
せっかくわだかまりが解けて絆が深くなった矢先だ。
今の千愛と舟瀬くんが心配な気持ちで胸は逸るけど。
なんで目の前の人が気になるんだろう。
こんな人を傷付けるようなヤツ……。
わたしらしくない。