キミの手 キミの体温

「葦原くん……なんであんなこと言ったりしたんだろ」



葦原くんが言ったことが嘘なのか本当なのかはわからない。


だけど宝珠が傷付けられたのは事実。



わたしが印刷室に宝珠を呼ばなかったら、あんな苦しそうな顔させなかったのに。



いくら後悔したって遅い。


現実は変わらない。

宝珠が苦しんでるのにこうして泣くことしか出来ない。



それが悔しい……。



宝珠を守れなかったことが悔しくて仕方ない。



「泣いてる場合じゃないよ千愛」



しっかりしなさいって水希が少し顔を厳しくさせる。


それでも涙を拭ってくれる手つきは優しくていつも通りの水希だ。



< 258 / 359 >

この作品をシェア

pagetop