キミの手 キミの体温
「……傷は消せないけど痛みからは救ってあげられるかもしれないでしょ」
めそめそと鼻をすするわたしに囁いて水希は小さく笑う。
……そうだよ。
一番傷付いてるのは宝珠自身なのに、わたしが落ち込んでる場合じゃない。
「舟瀬くんのところ行っておいで」
水希に押された背中とすくんだ足に力を込めて宝珠の元に向かった。
薄暗くなった空がわたしの不安を煽る。
切れた息を整えながらマンションの扉にいくら呼びかけても開く気配がない。
携帯の電源も切られてて宝珠が中に居るのか居ないのかすらわからない。