キミの手 キミの体温

「……反省してる?」


「えっ?」


「だって、千愛の代わりにプリント届けてくれたから」



ひんやりとした非常階段の空気にわたしたちの声がキンと響いた。



葦原くんのあの行動がわたしには罪滅ぼしのように思えたから。


だから後悔しているなら取り消して欲しい……って言うのはわたしの願望なんだろうか。



「そうですね……渋木先輩を巻き込んだのは反省してます。けど」


後悔はしてませんよ



そう言った彼の瞳に揺らぎなんてなくて。

ますます葦原くんの心の中が読めなくなる。



「なんでなの? 舟瀬くんは葦原くんのお兄さんなんでしょ?」


「だからだよ」


「……だからって」



そんなの悲しいって否定することすら虚しい気がして躊躇う。



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