キミの手 キミの体温
わたしの答えにまだ何か言いたげにしていたけど、
「……水希先輩がもっと早く来てくれたら良かったのに」
「えっ……」
自嘲した葦原くんがポツリと呟いてまたポンと髪に触れた。
これで気持ちは一気に彼の指先と言葉の方に逸らされてしまう。
「そしたら間違わなかったのかも」
言い残して去っていく後ろ姿に寂しさを感じるのは……同情なのかな。
千愛と舟瀬くんの為って息巻いた自分が恥ずかしくなる。
それでも。
肝心なことも聞けずに立ち尽くす自分の目は、まだ憂いた背中を追っている気がした。