キミの手 キミの体温
父親は優しい人だ。
政略結婚で結ばれた母親を大事にし、息子の俺も可愛がってくれる。
その優しさと愛情が俺や母さんだけに向けられていないことに気付いたのは、父親が居ない時に見せる母さんの寂しげな顔を見てしまったからだ。
父親が忘れていった手帳から落ちた一枚の写真。
そこに映った若い女性と男の子の姿に母さんの顔色が変わった。
「……母さん?」
いつも優しい笑顔しか見せたことがなかった母さんの悲しそうな顔。
恐る恐る声を掛けた俺を母さんはギュッと細い腕で抱きしめた。