キミの手 キミの体温
瑠璃が亡くなり、独りになった宝珠を父親が引き取ると言い出した瞬間。
……母さんの心が壊れてしまった。
母さんの中で亡くなった瑠璃は一生越えられない壁になり、遺された宝珠が父親の中で一番愛する者になったと認識してしまったからだ。
結局は瑠璃の妹が引き取ることになったけど、俺と母さんの中に出来た傷はしっかりと残っている。
ちゃんと愛された記憶があるばかりに裏切られた傷は深い。
元々体が丈夫ではなかった母さんは日に日に床に伏せるようになり、
「……優雅愛してるわ」
亡くなる直前までこう言って……俺にだけ優しい笑顔を浮かべていた。