キミの手 キミの体温

食事の度に部屋に呼びに来たのを拒んだあたしに、



「白奈っ。お腹空いてるんじゃない?」



リビングの入口から彼に呼ばれたママがこう言って手招きしてる。


隣で彼がママとあたしの顔を交互に窺い見てた。



あたしが居たかった場所に彼が居る。


若い時に結婚したホントのパパとは価値観の違いでいつもモメてた。


だから。
パパとの生活に見切りを付けたママに連れられて始まった2人だけの暮らし。


パパと暮らしてた時よりずっとママの顔が柔らかくなっていった。



だけど……ママの優しい顔が見られるって喜びと引き替えに、あたしは独りぼっちになった。



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