キミの手 キミの体温
「……ごめんね、白奈」
ゆっくりと歩み寄るママの声は初めて聞く震えた涙声だ。
白奈の為に頑張ってるママの為にあたしも独りぼっちを頑張ってた。
それに堪えられなくなってママのせいにして逃げたのは……あたしの方なのに。
「ママ……白奈に笑ってて欲しかったのに、間違ってたんだね」
こう言いながら自分の涙も拭わないで白奈の頬を服の裾で拭いてくれる。
「そうだよ……。ずっとママの一番は仕事。今の一番は」
止まらない不満を口に彼に視線を向けようと顔を上げれば、
「紅音さんの一番はずっと白奈ちゃんだよ」
二人分のタオルを握ってわたしたちの前に立っていた。