キミの手 キミの体温
ニシシッとイタズラっぽく笑う周助を一瞥して、いつもより少し遅れて号令をかける。
まだ少しだけ笑い声が混じった挨拶を終えて椅子に座った時、
「じゃ。クラス委員のおかげで場も温まったことだし……おーい」
出席簿に何やら書き込み終えた担任が、誰も居ない扉に向かって声を掛け始めた。
いきなり何だろう……。
担任の意味不明な行動に、クラスがざわついたり笑ったりで騒々しくなる。
みんなの視線が扉の方へと向かうより早く、
「あっ……」
真新しい制服に身を包んだ長身の男の子が現れて、一瞬静まり返った後……、
「キャー! 転入生!?」
教室の温度が急上昇した。
それも、主に女の子の。
だって現れた男の子の容姿は、緩い癖のある茶髪が似合う綺麗な顔をしていたから。
色めき立ったクラスメートたちに、彼の顔色はうっすらと笑みを浮かべていた。
良くも言えば爽やかで、悪く言えば完全に愛想笑い、だ。