キミの手 キミの体温
コピー機から顔を上げた彼はわざとらしく爽やかな作り笑顔を浮かべていた。
黙ったままわたしが首を横に振れば、
「そうですか」
クスッと小さく笑ってまたコピー機へと視線を戻した。
印刷室には規則的な機械音だけが響いてる。
なんて聞けばいいんだろ……。
どうしたら舟瀬くんを傷付けた理由を話してくれるかな?
どう切り出そうかと悩んで見つめていた横顔が、
「兄さんの居場所ですか?」
小さく呟きチラリとわたしを一瞥した。
まるで心の中を見透かされたような感覚……。
思わず見開いた瞳には、真正面からわたしを見据える葦原くんの顔が映っている。