キミの手 キミの体温

「渋木先輩の為ですか?」


「あれから千愛、ずっと落ち込んでるの。見てられなくて」


「優しいんですね、水希先輩」



そう言って微笑んだ瞳が寂しげに揺れた。


この瞳だ……。

わたしが気になってる瞳。



「優しいとかじゃない」



だってホントはわたし……この笑ってるのに悲しい縋るような瞳の理由を知りたがってる。


葦原くんの心の奥に沈んでる感情に触れたいって思ってる……。



そんなの千愛を悲しませるかもしれないってわかってるのに。



友達を悲しませないって決めてたのに……。



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