キミの手 キミの体温

縋るような眼差しと試すような声色が交差して頭の中を巡る。



千愛か葦原くんを選ぶ。



……どちらかを選ぶなんてわたしには出来そうにない。



だって決めたから。

大切な人の傍に居ることも、友達を悲しませないことも。



「キミを選ぶ。望むなら傍に居てあげる。……でもわたしは千愛も悲しませない」


「…………」


「だからキミも約束。ちゃんと舟瀬くんと話すって」



どちらかを選べばどちらかが傷付く。

だったらわたしはどちらも傷付けない方を諦めない。



話をして全てが解決するワケじゃないけど、このままただ憎み合うのは嫌だった。


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