キミの手 キミの体温
傷跡
水希からの電話で宝珠がマンションに居ないのを知ったのは、宝珠のマンションに向かう途中のことだった。
宝珠が居ない……。
言われてる言葉の意味がわからない。
何か言わなきゃって思ってるのに、喉が詰まって何も言えなかった。
電話口で呆然とするわたしに、
“嫌かもしれないけど……葦原くんが見つけてくれるから待ってて”
躊躇いがちに言われた言葉だけが、真っ白になった頭の中に繰り返される。
ホントなら葦原くんの名前なんて聞きたくないはずなのに。
宝珠に会えるなら今はそれにすら縋りたい。
それぐらいわたしは宝珠に会いたかった。
会って傍に居てあげたかった。
傷は完全に消せなくても痛みからは救ってあげたいから……。