キミの手 キミの体温
葦原さんに誘われて乗り込んだ助手席でずっと宝珠のことを考えていた。
もし……叔母さんから受けた傷がわたしを拒む理由なら、わたしは宝珠になんて言ってあげられるんだろう。
答えの出ない堂々巡り。
早く宝珠に会って抱きしめたい気持ちと拒まれることが怖い気持ち。
相反する感情がもどかしくて。
赤く光る信号を見上げていたわたしに、
「……優雅にあんなことを言わせてしまったのも、宝珠が閉じこもってしまったのも……悪いのは全部私だ」
「…………」
「私の行いの全部が……愛する人たちを不幸にしてきたんだ」
ひとりごちるように呟いた葦原さんの声で視線を運転席に移した。