キミの手 キミの体温
追憶と懺悔 side宰
事業家の父を持つ家庭の一人息子として生まれた日から手に入らないものなんてない。
常々自分でもそう感じる程、私の周りにはなんだって揃っていた。
事業を継ぐに相応しい最高の学問。
それを提供する環境。
友人には名のある家の子息令嬢を。
ゆくゆくは事業を継ぎ、決められた相手と結婚する。
最高に恵まれた最高につまらない日々。
それに心底飽きてしまったのは、限られた自由が最大限に使えた大学生の頃だった。
とにかく家から離れられる理由が欲しくて。
友人を介した家庭教師のアルバイトを紹介してもらった。