キミの手 キミの体温
付き合ってた頃から既に未練タラタラで、
“友達に戻ろう”
やんわりと告げられた別れの言葉に、未だにかじりついて千愛の傍に居る俺。
「……潮時か」
十年越しの相手に勝てる気なんてサラサラしない。
それでもどこか。
このまま舟瀬が千愛を拒絶し続けてくれたら……なんて思ってる浅ましく狡い奴。
「んなことしたら、千愛が笑わなくなるっての」
千愛の笑顔は見たい。
だったらそれは、舟瀬って存在に懸かってる。
千愛が泣くも笑うも……舟瀬次第だ。
「矛盾してんな……ボケボケだ」
自嘲してタバコの火を消し、屋上のコンクリートから立ち上がった。
今はもう少しだけ、友達って肩書きに甘えさせて貰おう……。