キミの手 キミの体温

付き合ってた頃から既に未練タラタラで、



“友達に戻ろう”



やんわりと告げられた別れの言葉に、未だにかじりついて千愛の傍に居る俺。



「……潮時か」



十年越しの相手に勝てる気なんてサラサラしない。



それでもどこか。

このまま舟瀬が千愛を拒絶し続けてくれたら……なんて思ってる浅ましく狡い奴。



「んなことしたら、千愛が笑わなくなるっての」



千愛の笑顔は見たい。

だったらそれは、舟瀬って存在に懸かってる。



千愛が泣くも笑うも……舟瀬次第だ。



「矛盾してんな……ボケボケだ」



自嘲してタバコの火を消し、屋上のコンクリートから立ち上がった。




今はもう少しだけ、友達って肩書きに甘えさせて貰おう……。


< 33 / 359 >

この作品をシェア

pagetop