キミの手 キミの体温

「……そうか。ありがとう」


「……え」



ずっと悲しそうな表情を滲ませていた葦原さんの顔がふっと緩む。



そこには微かに宝珠の面影があって……。
そして葦原くんのキリッとした雰囲気も持ち合わせているように見えた。



「私は愛してくれた女性を二人も不幸にしてしまった。二人の忘れ形見の宝珠と優雅を幸せにすることが償いだと思ってたけど……」


「…………」


「私には無理みたいだ」



大切な人を失い続けた絶望。
守りたいモノを守れない自分への諦め。



吐露した横顔には苦痛が滲んでいた。


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