キミの手 キミの体温
葦原さんに促され、車から降りたわたしの手のひらに一つの鍵が乗せられた。
くすんだ銀色をした少し古い形をした鍵。
首を傾げて見上げた葦原さんの視線を辿った先には、
「覚えてないかい?」
「えっ?」
何の変哲も無いこじんまりとしたマンションがあった。
宝珠が住んでいる背の高いマンションとは違う少し古ぼけた外見。
頭の片隅にモヤモヤが引っ掛かる。
そのままマンションを見つめていたわたしに、
「ここの3階に宝珠が居る。……かつて瑠璃と宝珠が暮らしていた部屋に」
「あっ……」
隣でマンションを見つめていた葦原さんがポツリと呟いた。