キミの手 キミの体温
葦原さんの言葉で脳裏に思い浮かぶのは、引っ越す前の家の近くにあった宝珠と瑠璃おばさんが住むマンション。
そうだ……。
小さい頃、わたしと宝珠が一緒に過ごした一番の場所だ。
「……瑠璃が亡くなって7年。未来に進むべきなのに瑠璃の思い出を消せなかった」
瑠璃おばさんが亡くなってからずっと葦原さんが借りつづけてきた部屋。
周りが未来に向かっていく中で変えることが出来ずに、主を失った部屋をそのままにし続けてきた。
そして今、宝珠がそこに閉じこもってしまっている。
瑠璃おばさんと過ごした優しい思い出の中に……。