キミの手 キミの体温

薄暗く静まり返った中は少し埃っぽく。


懐かしい風景の中で不意に、瑠璃おばさんのチーズケーキの香りを思い出して泣きたくなった。



見渡せば見渡す程に瑠璃おばさんの面影が散らばってる。



こんな優しい思い出の中で宝珠は何を思ってるんだろう。


こんなに優しくて残酷な場所で……。



考えただけで瞳の奥からじわっと涙が込み上げてきた。



確かにここには幸せな記憶が沢山詰まってる。



でも……ここに瑠璃おばさんは居ない。


宝珠を愛して抱きしめてくれる人は居ない……。



優しい思い出はそんな残酷な現実と隣り合わせに存在している。



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