キミの手 キミの体温
キミの手 キミの体温 side宝珠
“宝珠が大好きだよ。ずっと傍に居るよ”
こう囁きながら千愛の柔らかい唇が俺に触れていく。
憎まれながら犯された汚い体だって知られたくなかった。
知れば千愛は俺を嫌うってずっと思い込んで……怖がっていた。
だから優雅にバラされたあの時。
追いかけてきた千愛に真実を問いただされるのが怖くて拒絶して逃げ出した。
千愛だけが俺の全てだったのに。
千愛まで失って空っぽになって……絶望と悲しみに暮れながらここに逃げ込んだ。
ただ幸せだった頃の思い出だけに包まれていたかった。
そこに温もりも何もなくても……これ以上現実に向き合うのが怖くて仕方なかった。